マリア

ウチの近くに大きな虎がやってきた。住民は、危険を感じ外に出歩くことが減り、動物園に連絡をしても、あまりの大きさに何も出来ない状況。

ところが、この虎に食べられてしまったといった事件はない。むしろ、動物(人、野良猫etc)を食べる事を極端に嫌っているようだ。

やがて、その虎は人に危害を加えるようなことはしないと確信しつつあった。

ある日のこと、この虎が猫の死骸を口にくわえて運んでいるのが目撃された。目撃者はによると、当初は食べるために食い殺したのかと思ったのだが、虎はその死骸を食べる事はなく、近くの田んぼの端に穴を掘って死骸を埋めていた。そして、埋め終わると、手頃な大きさの石を置き、道に生えている花を添えた。どうやら供養してあげたようだ。

また別の日には、走ってて転んでしまった小さい子供の側に来て(勿論、最初は小さな子供は恐怖から泣きじゃくった)、傷口を優しく舐めてあげ、また別の日には、重い荷物を持っていたお婆さんに代わり、荷物を運んであげていた。

この虎は決して人に危害を加える事はしない。肉食獣でありながら、人やその他動物を食い殺すようなことはしない。近所の住民は皆、それを確信し、この虎のために小屋を建ててあげ、交代で餌をあげるようになった。

その虎が♀ということもあり、いつしか、マリアと呼ばれるようになった(聖母マリア的なことが含まれてる)

マリアが、近所の住民から慕われるようになって1週間が経った頃、マリアに元気がなくなっていた。何かの病気なのか、獣医に診てもらおうか?と話し合っていたときのこと。用水路に誰かの悪戯なのか、大量の氷が捨てられていた。それにより、水温が著しく低下し、落ちたら凍傷しかねないほど。その用水路に子犬が2匹落ちてしまった。必死でもがく子犬。しかし、あまりの冷たさに徐々に力を失う子犬。用水路に水はいっぱいで、流れも早く、助かる可能性は少ない。

その中にマリアが飛び込んでいった。体調は悪く、さっきまでぐったりしていたマリアが。必死でもがきながら、子犬を加えて用水路から助け出すマリア。子犬は無事助かったものの、マリアは力尽きたのか流されてしまう。

住民たちは必死でマリアを助け出す。助け出された頃には、マリアは相当衰弱していた。もはや、活きることが不可能なくらいに…。

「救急車を呼んでください!」

「まだ息はあります!、お願いです。誰か救急車を!」

「おいおい、虎のために何で救急車を呼ばないといけないんだ?」

冷ややかに対応する者もいた。マリアを認めつつも、所詮は虎と言わんばかりの住民もいる。

「お願いです。マリアはただの虎じゃないんです!お願いします、マリアを助けてください!!」

「今、救急車を呼んだから、とにかく、来るまでマリアを暖めておきましょう。」

マリアを1番可愛がっていたお婆さんが救急車を呼び、そして、毛布等の防寒具を持ってきてマリアを暖める。数分後、救急車が来てマリアを病院(一応獣医)へ運ばれた。

住民たちは後をついて行き、マリアを必死に見守る。

「マリア…、頑張れ…。」

「お願いします、先生。マリアを助けてください」

皆、マリアが助かることを祈り続ける。

「大丈夫、マリアはきっと助かるから…。」

そうお互いを励ましあいながら、ある者は悲痛の表情で、ある者は涙を流しながらマリアの無事を願って祈りつづけた。

数分後。

「一命は取り留めました。もう大丈夫です。」

「やった!」

「良かった〜」

「マリア、良かったね…。」

マリアは助かり、皆涙を流しながら喜んだ。皆が喜んでいる姿を見て、マリアも嬉しそうな表情をしていた。




という夢をみました。